独身の親族が亡くなったら相続順位はどうなる? 遺産相続の流れを解説
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国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集」によると、令和2年の岩手県の男性の生涯未婚率(50歳時未婚割合)は29.61%で、全国平均の28.25%を上回り、全国で5番目に高い水準となっています。
独身者が亡くなった場合、子どもや親、兄弟姉妹などの親族が法定相続人となります。
本記事では、独身者が亡くなった場合の相続順位やトラブルを弁護士に相談するメリットを、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。


1、独身の親族が亡くなった場合│相続人と相続順位
独身者が亡くなった場合、子どもや親族が法定相続人となります。本章では、具体的なケース別に誰が相続人となるか、相続の優先順序(相続順位)はどう決めるか、について解説します。
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(1)子どもがいる場合
独身者に子どもがいる場合、その子どもが相続人となります。子どもが複数いる場合は、遺産を均等に分けることが原則です。
たとえば、独身者が過去に結婚しており、当時の配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもは相続人に該当します。親権が元配偶者にあった場合でも、相続権には影響しません。また、独身者が結婚していなくても、認知している子どもがいる場合は、その子どもも相続人となります。
また、独身者の子どもが先に亡くなっていて、その子どもに子ども(孫)がいる場合、相続人は孫になります。さらに、その孫も亡くなっていて、ひ孫がいる場合は、ひ孫が代わりに相続します。このように、相続人が亡くなっている場合に、その子どもが代わりに相続することを「代襲相続」といいます。 -
(2)子どもがいない場合
独身者に子どもがいない場合は、親が相続人になります。両親が存命であれば、それぞれ遺産の半分ずつを相続します。
両親とも亡くなっている場合は、祖父母が相続人となる可能性があります。祖父母もすでに他界している場合は、兄弟姉妹に相続権が移ります。 -
(3)子どもも親もいない場合
子どもも親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が複数いる場合は、遺産を均等に分けることになります。
ただし、兄弟姉妹の中に異父兄弟や異母兄弟がいる場合、その相続分は全血兄弟姉妹(父母が同じ兄弟姉妹)の半分になります。そのため、遺産分割の計算が少し複雑になることがあります。
兄弟姉妹が亡くなっていて、その子ども(甥や姪)がいる場合は、代襲相続により甥や姪が代わりに相続します。ただし、代襲相続が適用されるのは甥や姪までで、その子ども(大甥・大姪)には相続権がありません。
2、法定相続人がいない場合はどうなる?
独身者に子どもや親、兄弟などの法定相続人がいない場合、以下の手続きに従って財産が整理されます。
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(1)相続財産清算人が財産を清算する
法定相続人がいない場合、亡くなった人の遺産は「相続財産清算人」という専門の管理者によって清算されます。
【相続財産清算人の選任方法】
利害関係者や検察官が家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が選任します。相続財産清算人には被相続人が居住していた地域の弁護士や司法書士などが選ばれることが多いです。
【相続清算人が財産を清算する流れ】① 相続人の存在確認
家庭裁判所が相続財産清算人を選ぶと、その決定と相続人を探すための公告を官報に掲載します。この公告は最低6か月間続き、その間に相続人が名乗り出る必要があります。期間が過ぎても誰も名乗り出なければ、「相続人がいない」と確定します。
② 債権者・受遺者の存在確認
相続人がいないことが確定した後、相続財産清算人はさらに2か月以上の期間を設け、亡くなった人に対して請求権を持つ債権者や、遺言書で財産を受け取る権利がある受遺者を確認するための公告を行います。
③ 資産の清算(売却や現金化)
必要に応じて、清算人は家庭裁判所の許可を得て、不動産や株式などの資産を売却し、現金化します。これにより、清算を円滑に進められるようになります。
④ 資産の分配・管理
その後、確認された債権者や受遺者に法律に基づいて財産を分配し、残った財産があれば、その管理を行います。 -
(2)特別縁故者に財産が分けられる
相続財産管理人が債権者や特定受遺者に財産を分配した後、残った財産がある場合、それは「特別縁故者」に分けられる可能性があります。
特別縁故者とは、法定相続人ではないものの、亡くなった人と特別なつながりがあった人を指します。- 特別縁故者と認められる可能性が高い方
- 内縁の配偶者
- 故人を長期間介護していた方
- 故人に経済的援助をしていた方
- 長年同居し生計を共にしていた友人・知人
このような人たちが財産を受け取るためには、家庭裁判所に申し立てを行い、認められる必要があります。
独身者にとって、特別縁故者は大切な存在です。法律上の相続人ではなくても、「親しい人に財産を渡したい」と思うのは自然なことでしょう。もし自分が特別縁故者に当てはまる可能性があるなら、裁判所に申し立てをしましょう。 -
(3)財産が国庫に帰属する
特別縁故者もおらず、財産を分けてもまだ余りがある場合、そのお金や財産は最終的に国のものになります。これを「国庫に帰属する」といいます。
一度、財産が国庫に帰属すると、原則として取り消しはできません。相続人や特別縁故者の調査は、相続問題の実績が豊富な弁護士に相談するのも有効な手段のひとつです。弁護士は正確かつ効率的に調査を進めます。
お問い合わせください。
3、独身の親族が亡くなったときの遺産相続の流れ
独身者が亡くなった場合、実際の相続手続きは以下のような流れで進みます。
それぞれ解説していきます。
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(1)遺言書の有無の確認
遺産相続を始める際には、まず遺言書の有無を確認する必要があります。
一人暮らしの独身者が亡くなると、遺言書を見つけるのが難しいことがあります。生前に親などの身近な人に遺言書の存在や保管場所を伝えていればスムーズですが、そうでない場合は、故人が保管していそうな場所を確認することが大切です。
また、公証役場で遺言の有無の検索を依頼したり、法務局で自筆証書遺言の保管状況を確認したりする方法もあります。
遺言書がない場合には、相続人と相続財産の調査後に遺産分割協議を行います。 -
(2)相続人と相続財産の調査
遺言書の有無の確認と並行して、相続人と相続財産の調査を行いましょう。
まず、相続人の調査です。被相続人の戸籍謄本を取得し、出生から死亡までのすべての戸籍を確認します。
次に、相続財産の調査です。主な財産は不動産、預貯金・金融資産、負債に分類されます。
独身者は、自分の財産を他人に詳しく伝えていないことが多く、財産の全容を把握するのが難しいことがあります。そのため、郵便物や金融機関からの通知、クレジットカードの利用履歴なども手がかりとして活用するとよいでしょう。また、弁護士に調査を依頼することもできます。 -
(3)相続するか否かの検討
遺言書の検認が終わり、相続人調査や財産調査を終えたら、相続するか否かの検討をします。この判断は、被相続人が残した財産や負債の状況を踏まえて慎重に行う必要があります。
相続するか否かは、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に決めなければなりません。この期間を「熟慮期間」といいます。特に独り暮らしで亡くなった場合(孤独死)は、相続人がすぐに気づかないこともあり、その分、相続の判断が遅れる可能性があります。発見が遅れた場合でも、死亡の事実を知った時点から3か月の熟慮期間がカウントされるため、速やかに財産や負債の調査を進めることが重要です。
相続するか否かの判断は、弁護士に相談することで手続きがスムーズになり、法律的なリスクも回避できます。不安がある場合は、早めに相談するとよいでしょう。 -
(4)遺産分割協議
相続放棄の検討が終わり、相続を行うことを決めたら、次に遺産分割協議を行います。この協議は、相続人全員で遺産をどのように分けるかを具体的に決める重要な手続きです。
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。全員の同意が得られなければ、協議は成立しません。
しかし、独身者が亡くなった場合、相続人同士の関係が希薄なことも多く、協議への参加を渋られるケースもあります。これは、相続人となる兄弟姉妹や甥・姪が、被相続人と長年交流がなかったり、疎遠になっていたりするためです。しかし、協議は全員の合意が必要なため、一人でも欠けると進められません。スムーズに話し合いを進めるためには、弁護士などの助けを借りるとスムーズに解決できることがあります。 -
(5)相続税の申告と財産の名義変更
遺産分割協議が終わったら、相続税の申告と財産の名義変更を行います。これらは期限があるため、速やかに進めることが重要です。
相続税の申告は、相続財産の総額が基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)を超える場合に必要となり、相続開始から10か月以内に行わなければなりません。財産の評価や負債の確認を早めに行い、必要書類を準備しましょう。
その他、ゴルフ会員権や火災保険などの契約も名義変更が必要な場合があるため、手続きを忘れないことが重要です。
4、相続トラブルを弁護士に相談するメリット5つ
独身の親族が亡くなった場合、相続人同士の関係が希薄なことが多く、相続手続きが複雑になり、さまざまなトラブルが発生することがあります。こうした状況では、弁護士に相談することで円滑に進められることが多いでしょう。
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(1)相続人間の交渉を任せられる
独身者の相続では、兄弟姉妹や甥・姪が相続人となるケースが少なくなく、遺産分割協議に消極的な人や、連絡が取りづらい人がいることも珍しくありません。弁護士が代理人となることで、意見の対立や感情的なもつれを回避した、冷静な話し合いが期待できます。
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(2)必要な法的手続きをスムーズに進められる
相続には戸籍謄本の収集、遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記、金融機関での名義変更など、多くの手続きが必要です。独身者の相続では、兄弟姉妹が多数いる場合や、甥・姪が代襲相続人となるケースもあり、戸籍の調査が複雑になります。弁護士に依頼すれば、こうした手続きを迅速かつ正確に進められるでしょう。
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(3)遺産調査を依頼することで財産の漏れを防げる
独身者の場合、財産の管理状況を他の家族が把握していないことが多く、預貯金や不動産が見落とされるリスクがあります。弁護士に依頼すれば、金融機関への照会や、不動産登記簿の取得などの調査が迅速に行われ、財産の把握や適切な分配ができるでしょう。
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(4)公正で正確な遺産分割を実現できる
兄弟姉妹が相続人となる場合、法定相続分や寄与分の考え方が分かりにくいことがあります。また、不動産や株式など、分けにくい財産の扱いが課題になることも多いです。弁護士は法的知識に基づいて公平な分割方法を提案し、相続人全員が納得できる形にまとめます。
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(5)調停や訴訟になっても安心して任せられる
もし遺産分割協議がまとまらず、調停や訴訟に発展した場合でも、弁護士が代理人として対応します。特に「遺留分侵害額請求」や「遺産分割調停」など法的手続きが必要な場合、弁護士のサポートにより迅速かつ的確な解決が期待できます。
5、まとめ
独身の親族が亡くなった場合の相続では、法定相続人が誰になるのかが重要なポイントです。
子どもがいる場合はその子どもが法定相続人となり、子どもがいない場合は親や兄弟姉妹が相続人として遺産を引き継ぎます。また、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子ども(甥・姪)が代襲相続人となります。一方、相続人がいない場合は相続財産管理人が選任され、特別縁故者への分与などの手続きが行われ、最終的に財産は国庫に帰属します。
相続はスムーズに進む場合もありますが、相続人間でのトラブルや複雑な手続きが発生することも少なくありません。ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスには、相続問題の解決実績が豊富な弁護士が在籍しています。独身者の相続は特有の問題が生じることも多いため、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。
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