遺留分の対象となる相続財産とは? 遺留分の計算方法も解説
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盛岡市の2022年の統計によると、2022年には盛岡市で4221名の方が亡くなりました。被相続人の死後は相続が開始されますが、遺留分の対象となる財産が発生するケースもあります。
遺留分とは、民法で定められた法定相続人に最低限保障される遺産の取り分のことで、もし、この遺留分を超えた相続が行われた場合、その侵害額に相当する金銭の支払いを求める遺留分侵害額請求が可能です。また、遺留分の対象は、相続財産だけでなく生前贈与なども含まれます。
今回は、遺留分の対象になる相続財産や遺留分の計算方法について、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも遺留分とは?
遺留分とは、民法において定められた、相続人に認められる最低限の相続分のことをいいます。
たとえば、特定の相続人だけに遺産を継がせる旨の遺言があった場合、他の相続人に対する不平等が起こらないように、最低限の遺産相続権を保障するのが遺留分という制度です。
遺留分が侵害された相続人(=権利者)は、遺留分の侵害者に対して「遺留分侵害額請求」を行い、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求めることができます。ただし、遺留分の権利を持つのは、被相続人の配偶者・子ども・直系尊属のみです。兄弟姉妹は、遺留分の権利を持ちません。
2、遺留分の対象となる相続財産
遺留分の対象には、相続財産だけでなく、一定の範囲内の生前贈与が行われた財産も含まれます。そこで、遺留分の対象となる相続財産にはどのようなものがあるのか、確認しておきましょう。
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(1)相続開始時の遺産
被相続人の遺産、つまり相続財産はすべて遺留分の対象になります。たとえば、土地や建物などの不動産、車などの動産、預貯金、株式などが対象です。
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(2)相続開始の前1年以内に行われた贈与
被相続人が死亡した日から起算して1年以内に行われた贈与は、遺留分の対象になります。
たとえば、亡くなる半年前に譲渡された土地は、その土地の価格が遺留分の対象になります。ポイントとしては、財産の引き渡し日ではなく、譲り渡す約束をした日(契約日)を基準に判断します。
そのため、土地の引き渡しが半年前で、契約日が数年前という場合には、遺留分の対象になりません。重要なのは、契約が1年以内に行われたどうかです。 -
(3)遺留分を侵害していることを知りつつ行われた贈与
贈与する側(=贈与者)と贈与される側(=受贈者)が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合、その贈与は遺留分の対象になります。
たとえば、贈与の契約が数年前であったとしても、遺留分侵害すると具体的に予測できていたのであれば、遺留分の対象になります。 -
(4)不相当な対価で行われた有償行為
有償行為とは、金銭的な対価をともなう譲渡行為です。通常、売買などの有償行為は、遺留分の侵害にはあたりません。しかし不相当な対価で行われた場合には、遺留分の対象となります。
たとえば、1000万円の土地を10万円で売った場合には、売買契約の形式をとっているだけで贈与に近いと考えられます。このように不相当な対価で行われた場合には、遺留分権利者の権利を保護するため、遺留分の対象とされます。 -
(5)共同相続人の特別受益
特別受益とは、生前贈与や遺贈により特定の相続人が相続による財産取得とは別に受けた利益を指します。たとえば、結婚のための支度金や不動産の頭金を受け取った場合です。このような場合、特定の相続人だけが不公平に利益を得ているとみなされます。
このような特別授益があった場合は、相続開始から10年以内であれば遺留分の対象になります。
3、遺留分の計算方法
遺留分の計算方法について確認しておきましょう。遺留分を計算するためには、3つのステップで計算していきます。
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(1)ステップ1|遺留分の基礎財産を計算する
前述の通り、遺留分の対象となるのは、相続時の遺産だけでなく、生前贈与や特別受益も含まれます。
遺留分の基礎となる財産(=基礎財産)を算出する計算式は以下の通りです。基礎財産=相続時の遺産(プラス財産)+1年以内の生前贈与+10年以内の特別受益−負債(マイナス財産) -
(2)ステップ2|個別の遺留分の割合を計算する
遺留分の割合は、相続人の内訳や人数によって変わります。
また、遺留分の合計は、原則として遺産全体の2分の1、両親などの直系尊属のみが相続人の場合は3分の1と定められています。
相続人のケースごとの遺留分の割合は、以下の表の通りです。相続人の構成 全員の遺留分割合 相続人それぞれの遺留分割合 配偶者 子ども 父母 兄妹 配偶者のみ 1/2 1/2 - - - 配偶者+子ども 1/2 1/4 1/4 - - 配偶者+父母 1/2 1/3 - 1/6 - 配偶者+兄妹 1/2 1/2 - - 権利なし 子どものみ 1/2 - 1/2 - - 子ども+父母 1/2 - 1/2 権利なし - 子ども+兄妹 1/2 - 1/2 - 権利なし 父母のみ 1/3 - - 1/3 - 兄妹のみ なし - - - 権利なし -
(3)ステップ3|実際の遺留分を求める
ステップ1・2で遺留分の基礎財産と遺留分割合を確認できたら、以下の式の通り2つを掛け合わせ、遺留分額を算出します。
遺留分=遺留分の基礎となる財産×遺留分の割合
計算の結果、遺留分が受け取った財産を上回る場合は、遺留分が侵害されていることになります。遺留分が侵害されている場合には、遺留分侵害額請求を行い、他の相続人に不足分を請求することができます。
遺留分侵害額請求を正確に算出するのが難しい、遺留分が侵害されているか確信が持てないなどの場合は、一度弁護士に相談することをおすすめします。 -
(4)ケースでみる遺留分の計算
前述の遺留分の計算方法をもとに、3つの具体的なケースを使って実際に算出してみましょう。
パターン1|配偶者+子ども1人
配偶者と子ども1人が相続人の場合、遺留分は全遺産の2分の1と定められています。配偶者と子どもの遺留分割合はそれぞれ2分の1ずつなので、遺留分は以下のステップで算出できます。ステップ1 遺留分の基礎財産=5000万円 ステップ2 2分の1(全体の遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1 ステップ3 配偶者:5000万円×4分の1=1250万円
子ども:5000万円×4分の1=1250万円
パターン2|配偶者+子ども3人
配偶者と3人の子どもが相続人の場合、遺留分は全財産の2分の1です。配偶者の法定相続分は2分の1、3人の子どもは残り2分の1を等分するため、それぞれ6分の1ずつが法定相続分になります。ステップ1 遺留分の基礎財産=5000万円 ステップ2 配偶者:2分の1(全体の遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1
子1:2分の1(全体の遺留分)×6分の1(法定相続分)=12分の1
子2:2分の1(全体の遺留分)×6分の1(法定相続分)=12分の1
子3:2分の1(全体の遺留分)×6分の1(法定相続分)=12分の1ステップ3 配偶者:5000万円×4分の1=1250万円
子1:5000万円×12分の1=約416万円
子2:5000万円×12分の1=約416万円
子3:5000万円×12分の1=約416万円
パターン3:兄弟姉妹+子ども1人
兄妹姉妹と子どもが相続人の場合、兄弟姉妹に遺留分はありません。そのため、遺産全体の中で認められている遺留分を按分する必要はなく、2分の1すべてが子どもの遺留分になります。ステップ1 遺留分の基礎財産=5000万円 ステップ2 2分の1(全体の遺留分)×1=2分の1 ステップ3 5000万円×2分の1=2500万円
4、遺留分を無視した遺言書が作成されていた場合の対処法
遺留分を無視した遺言書が作成されていた場合には、遺留分侵害額請求をすることが可能です。遺留分侵害額請求とは、前述の通り、遺留分の侵害額に相当する金額をお金で返還してもらう手続きです。
ただし、遺留分を侵害する内容の遺言であっても、遺言としては有効です。そのため、勝手に破棄すると相続欠格として相続人としての地位を失う可能性があります。そのため、まずは冷静に弁護士に相談し、適切に遺留分侵害額請求の手続きを進めましょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
遺留分の対象には、相続時の遺産だけでなく、生前贈与や特別受益にあたるものも含まれます。また、遺留分の計算は、複雑で自分で正確に計算できないこともあるかもしれません。遺産分割の際に不平等と感じた場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスでは、相続・遺産問題の解決実績がある弁護士が遺留分の調査や遺留分侵害額請求についてアドバイスをいたします。不平等な相続にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています