離婚後の女性の結婚(再婚)禁止期間が廃止│民法改正について解説
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盛岡市が公表している統計資料によると、令和4年度の盛岡市内での離婚件数は600件でした。
これまでは女性が再婚をする場合、法律上、一定期間が経過しなければ再婚をすることができませんでした。しかし民法改正により再婚禁止期間が廃止され、令和6年4月1日から、男女ともに離婚後すぐに再婚することが可能になりました。
今回は、女性の離婚と結婚に関して重要になる再婚禁止期間について、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。
1、女性の再婚が禁止されている期間は?
これまでは女性についてのみ離婚後、一定期間再婚をすることが禁止されていました。これを「再婚禁止期間」といいます。以下では、再婚禁止期間の概要について説明します。
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(1)女性の再婚が禁止されている理由
これまでの民法では、女性は、離婚をした日から100日間は再婚をすることができないと定められていました。男性については再婚禁止期間の定めはなく、女性についてのみ設けられている制限です。
女性についてのみ再婚禁止期間が設けられていた理由は、父親を明確にすることで子どもの権利・利益を保護するためです。
そのため、以下のように民法で定められていました。- 離婚から300日以内に生まれた子どもは前の夫の子どもと推定する
- 婚姻から200日経過後に生まれた子どもは現在の夫の子どもと推定する
これにより、離婚後すぐに再婚して妊娠すると、生まれてくる子どもが前の夫の子どもなのか、現在の夫の子どもなのかの推定が競合してしまい混乱が生じてしまいます。
そこで、このような混乱を回避するために、女性についてのみ100日間の再婚禁止期間が設けられています。 -
(2)再婚禁止期間とその計算方法
再婚禁止期間は、前婚の解消または取消の日から100日間です。
民法では、初日不算入の原則が設けられていますので、期間計算にあたっては、初日をカウントしないのが原則となります。しかし、再婚禁止期間の計算にあたっては、初日不算入の原則は適用されませんので、離婚した日を1日目として計算します。 -
(3)再婚禁止期間を守らなかったらどうなる?
再婚禁止期間を守らずに、離婚後100日以内に婚姻届を提出したとしても、基本的には婚姻届は受理されません。また、誤って受理されたとしても、婚姻の取消し事由となりますので、当事者や親族などは婚姻の取消しを請求することができます。
なお、再婚禁止期間を守らなかったとしても罰則はありませんが、子どもの父親が前の夫なのか、再婚した現在の夫なのかがわからず子どもの権利が不安定になるといったリスクがありますので注意が必要です。
2、再婚禁止期間が例外となるケース
これまでの民法では、再婚禁止期間が設けられていましたので、原則として再婚禁止期間内は再婚をすることができませんでした。しかし、以下のようなケースに該当すれば例外的に再婚することが可能です。
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(1)離婚する時点で妊娠していない
再婚禁止期間が設けられた理由は、子どもの父親が誰であるかを明確にするためです。女性が離婚時点で妊娠していない場合には、再婚後に妊娠したとしても、元夫の子どもである可能性はありませんので、再婚後の夫の子どもと推定することができます。
なお、離婚する時点で妊娠していないかどうかは、医学的に判断する必要がありますので、妊娠していない事実を証明するために医師の診断書が必要になります。 -
(2)離婚後に元夫との子どもを出産した
離婚前に元夫との子どもを妊娠し、離婚後にその子どもを出産した場合は、生まれた子どもは元夫との間の子どもであることが明確ですので、父親が誰であるかわからなくなることはありません。そのため、再婚禁止期間内であっても再婚をすることが可能です。
なお、離婚前に妊娠をしていたかどうかは、医学的に判断する必要がありますので、医師の診断書が必要になります。 -
(3)妊娠する可能性がない
再婚をする女性が子どもを妊娠する可能性がない、または妊娠する可能性がほとんどない場合には、父親が誰であるかわからなくなるおそれはありませんので、再婚禁止期間内でも再婚をすることができます。
これにあたる事情としては、以下のようなものが挙げられます。- 女性が高齢である
- 病気などにより子宮を全摘出した
なお、子宮の全摘出を理由に再婚をするときは、その旨を証明する医師の診断書が必要になります。
3、民法改正により再婚禁止期間が撤廃に
ここまで女性の再婚禁止期間について説明してきましたが、実は、最近の民法改正により、再婚禁止期間は撤廃されることになりました。以下では、再婚禁止期間撤廃の理由やいつから改正民法の施行時期などについて説明します。
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(1)再婚禁止期間が撤廃された理由
再婚禁止期間が設けられた理由は、父親の推定が重なることにより、誰が子どもの父親であるかわからなくなる事態を回避するためです。
しかし、医学が進歩した現代では、子どものDNA鑑定により、子どもの父親が誰であるかは容易に特定できるようになりました。これにより父親が誰であるかわからなくなるおそれはなくなり、再婚禁止期間を設ける意味がなくなりました。
また、離婚後300日以内に出産した場合、実際には別の男性と間の子どもであったとしても、嫡出推定制度により、前夫との間の子どもと推定されてしまいます。子どもの出生届を提出すると、戸籍上、自動的に前夫の子どもとして記載されてしまうため、それを避けるために出生届を提出しない親も存在していました。これにより無戸籍の子どもが生じるという問題があることも再婚禁止期間が撤廃された理由の一つです。 -
(2)再婚禁止期間を撤廃する改正民法の施行は令和6年4月1日から
民法改正によりこれまで女性に設けられていた再婚禁止期間は撤廃され、離婚後はいつでも自由に再婚をすることが可能になりました。改正民法は、令和6年4月1日から施行されていますので、今後再婚するという方については、再婚禁止期間が適用されることはありません。
4、離婚のトラブルを弁護士に相談するメリット
再婚禁止期間の撤廃により、女性は、いつでも自由に再婚することが可能になりましたが、再婚をするには現在の夫との離婚を成立させなければなりません。現在の夫との間で離婚トラブルが生じているという方は、まずは弁護士にご相談ください。
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(1)相手と代わりに交渉してくれる
離婚をするためには、まずは相手と話し合いをする必要がありますが、離婚に応じてくれない相手を説得しなければならないのは大きな負担といえるでしょう。相手との関係性によっては、直接交渉をすること自体にストレスを感じる方も少なくありません。
弁護士は、代理で相手との交渉を行うことができますので、負担やストレスを大幅に軽減できるのが大きなメリットです。自分ひとりで離婚手続きを進めることに不安を感じる方は、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。 -
(2)離婚に関して法的なアドバイスを得られる
離婚にあたっては、親権、養育費、婚姻費用、慰謝料、財産分与、年金分割、面会交流などの離婚条件の取り決めが必要になります。法的な知識がなければ適切な離婚条件を取り決めることができず、不利な条件で離婚をしてしまう可能性が高くなります。
弁護士であれば離婚問題に関する豊富な知識と経験がありますので、個々人の状況に応じて適切な条件で離婚することができるように法的なアドバイスを受けられるのもメリットのひとつです。弁護士のアドバイスにしたがって離婚手続きを進めていけば、不利な条件で離婚するといった事態を回避しやすくなるでしょう。 -
(3)慰謝料請求したい場合に計算や手続きを任せられる
慰謝料請求も弁護士に相談するとメリットが大きい事案です。相手に不倫や暴力といった有責性がある場合には、今後の生活のためにも相手に対してしっかりと慰謝料を請求していくことが大切です。
慰謝料を請求するには、相手に有責性があることを証拠により立証していかなければなりませんので、事前の証拠収集が不可欠となります。どのような証拠が必要になるかは、具体的な状況によって異なりますので、弁護士に依頼して証拠収集のサポートをしてもらうとよいでしょう。
また、離婚慰謝料には、一定の相場がありますので、スムーズに離婚手続きを進めるためには相場を踏まえて慰謝料請求していくことが大切です。弁護士に相談すれば、状況に応じた慰謝料相場をアドバイスしてもらうことできます。
お問い合わせください。
5、まとめ
これまでは女性は、再婚が禁止されている期間が定められていたため、離婚から100日以内の再婚が民法により禁止されていました。しかし、令和6年4月1日施行の改正民法により再婚禁止期間が撤廃されましたので、現在は、離婚後はいつでも再婚することができるようになっています。
現在の夫との離婚でもめているという場合には、弁護士のサポートが重要になりますので、まずはベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています