養育費を受け取りながら生活保護を受給することは可能?
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離婚後、子どもをひとりで育てていく中で、生活が苦しくて生活保護を受けるべきか悩むケースもあるでしょう。
養育費を受け取っていても生活保護を受給できますが、保護費が減額されるおそれもあります。
生活保護の概要や養育費との関係・養育費が勝手に減額された際の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。
1、生活保護とは
そもそも、生活保護とはどのようなものなのでしょうか?
以下では、生活保護制度の基本的な仕組みや受給条件について解説していきます。
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(1)生活保護制度の概要
生活保護制度とは、生活保護法に基づき、生活に困っている方に対して必要に応じた保護を行い、最低限の生活を保障するための制度です。厚生労働省が管轄しており、各市区町村の福祉事務所が窓口となっています。
援助の内容は一律ではなく、生活の状況や世帯構成によって異なります。主な援助内容は、以下の8種類です。扶助の種類 概要 生活扶助 食費や衣服費などの日常生活費 住宅扶助 家賃などの住居費 教育扶助 義務教育を受けるための費用 医療扶助 診療・入院などの医療費 介護扶助 介護サービス利用費 出産扶助 出産に必要な費用 生業扶助 就職に必要な技能の習得などにかかる費用 葬祭扶助 葬儀に必要な費用
厚生労働大臣が定めた基準による最低生活費と収入を比較し、収入が下回った場合にその差額が生活保護費として支給されます。収入には、就労で得た収入のほか、年金などの社会保障給付や親族による援助も含めて計算されます。
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(2)生活保護を受給するための条件
生活保護を受けるには、次のような条件を満たす必要があります。
【生活保護を受給するための条件】
- 不動産、自動車、預貯金など、ただちに活用できる資産を保有していない
- 就労できない、もしくは就労していても必要な生活費を得られていない
- 年金や手当などの社会保障給付を活用しても必要な生活費を得られていない
- 親族からの援助が受けられない、もしくは援助を受けていても必要な生活費を得られていない
生活保護は、ただ収入が少ないというだけではなく、あらゆる方法を尽くしてもなお生活に困窮している方が対象となる制度です。
なお、不動産や自動車に関しては、例外的に保有が認められるケースもあります。上記の条件以外にも細かい規定が定められているため、詳しくは居住地を管轄している市区町村の福祉事務所で確認しましょう。
2、生活保護を受給していても養育費は受け取れる?
生活保護を受給していたとしても、養育費を受け取ることは可能です。以下では、生活保護を受けながら養育費を受け取れる理由や注意点について解説します。
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(1)生活保護を受給していても養育費はもらえる
生活保護を受給していたとしても、元配偶者からの養育費は受け取れます。養育費は子どもの重要な権利であり、受け取りを制限する規定はないためです。
ただし、養育費は生活保護の制度上では「収入」として扱われるため、福祉事務所に申告したうえで受け取る必要があります。
申告しないまま生活保護費と養育費を二重取りした場合、不正受給とみなされるおそれもあるため注意しましょう。申告の方法については各自治体によって異なる可能性があるため、担当ケースワーカーに確認するようにしてください。 -
(2)養育費をもらっていることで生活保護費が減額されることがある
生活保護費の受給中でも養育費は受け取れますが、それによって生活保護費が減額される可能性があります。養育費は収入とみなされ、その金額分だけ生活保護費から差し引かれるためです。
これは、生活保護制度の「最低生活費を補うための支給」という原則に基づいています。
不正受給とならないためにも、養育費を受け取った際は忘れずに福祉事務所に申告しましょう。また、支払いが途絶えてしまった場合にも、速やかに申告する必要があります。
お問い合わせください。
3、生活保護を受給していることを理由に養育費を減額された場合は?
生活保護の受給を理由に、支払い義務者から養育費を一方的に減額されることは認められません。養育費は子どもの生活を守るための権利であり、親の生活状況によって勝手に減らされるべきものではないためです。
それでも、養育費の支払いを打ち切られたり、減額されたりするトラブルは少なくありません。このような場合の対処法について、以下で具体的に確認していきましょう。
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(1)養育費の減額事由に該当しないことを説明する
まずは、養育費を受け取る側が生活保護を受けていたとしても、養育費の減額理由にはならないことを説明しましょう。
養育費の金額は、離婚時に子どもの年齢や生活費、収入状況などをもとに決定します。この金額を変更したい場合には、当事者同士で話し合って合意するか、調停や審判などの法的手続きを行う必要があります。
相手方が「減額理由になる」と勘違いしている可能性も考えられるため、まず当事者間で話し合いを試みることが大切です。感情的にならず、子どもの将来を第一に考えた対応を心がけると、冷静な話し合いにつながりやすくなります。 -
(2)家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる
元配偶者が話し合いに応じない場合や、話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てます。
養育費請求調停とは、家庭裁判所の調停委員を交えて話し合いを行い、養育費の支払いについて合意を図る手続きです。
調停では、過去に取り決めた養育費の金額が妥当かどうかや、今後の支払い計画などについて話し合います。生活保護を理由に支払いを拒んでいる場合でも、裁判所の場で正式に反論し、適正な養育費の支払いを求められます。 -
(3)調停が不成立となった場合は審判で解決
調停で話がまとまらず不成立となった場合は、自動的に「審判」に移行します。
審判とは、裁判官が両者の主張や証拠をもとに養育費の金額・支払い方法を決定する手続きです。調停とは異なり、話し合いではなく法的な判断により結論が出されます。
調停・審判で養育費の支払いが決定すれば、裁判における判決と同等の効力をもつ「調停調書」もしくは「審判書」が作成されます。これによって、その後支払いが滞った場合には、給与や財産の差し押さえといった強制執行を申し立てることが可能です。
4、離婚後のトラブルを弁護士に相談するメリット
離婚後の養育費や生活費に関するトラブルは、早めに弁護士に相談することでスムーズに解決できる可能性が高まります。弁護士に相談するメリットは、以下のとおりです。
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(1)元配偶者との交渉を任せることができる
離婚後も元配偶者とのやり取りが続くと、精神的な負担が大きくなりやすい傾向にあります。
とくに養育費の支払いや生活費の工面について意見が対立している場合、感情的な対立に発展するケースもあるでしょう。
そのようなときに弁護士に依頼すれば、元配偶者とのやり取りをすべて任せられます。これにより、直接の接触を避け、法的な根拠に基づいた主張が可能になります。 -
(2)話し合いで解決できない問題は調停や審判で解決できる
元配偶者との間で話し合いができない、あるいは話し合いがまとまらない場合には、調停や審判による解決を目指します。
調停や審判を有利に進めるためには、証拠となる書類の準備や適切な主張の組み立てが必要です。ひとりでの手続きが不安な場合には、弁護士に依頼することでスムーズに進められます。
また、相手が虚偽の主張をした場合にも、弁護士は客観的な証拠をもとに適切に反論できます。自分にとって不利な判断が下されるリスクを軽減できるため、安心して任せられるでしょう。 -
(3)未払いの養育費は強制執行で回収できる
調停や審判で養育費を取り決めたにもかかわらず、相手が支払いを拒んでいる場合は、強制執行で未払い分を回収できます。
しかし、相手方が仕事を辞めてしまった場合、給与の差し押さえは行えません。また、強制執行は相手方の財産を奪う強力な手段であるため、感情的な対立が生じてしまうおそれもあります。
弁護士であれば、強制執行すべきかどうかの判断や手続きのサポートが可能です。トラブルを避けたうえで未払いの養育費を回収するためにも、一度弁護士に相談することをおすすめします。
お問い合わせください。
5、まとめ
離婚後に生活保護を受給したとしても、子どもの養育費は受け取れます。ただし、養育費は制度上では収入として扱われるため、生活保護費が調整・減額されることは理解しておきましょう。
また、生活保護を理由に元配偶者から養育費の減額を求められたとしても、それは正当な理由にはなりません。もし支払いを止められたり、勝手に減額されたりした場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
離婚後の生活は、経済的にも精神的にも大きな負担が伴います。養育費の扱いで悩んだときには、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
