第三者からの情報取得手続とは? 養育費を回収する方法を弁護士が紹介
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盛岡市の公表データによると、令和4年に盛岡市では364組の離婚が成立しました。
離婚時には親権者や養育費についての取り決めをすることが一般的ですが、約束通りに養育費が支払われないというケースは少なくありません。そのような場合、強制執行手続きをとることが有効ですが、相手の情報を得るための手段として利用されるのが、「第三者からの情報取得手続」という制度です。
ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。


1、第三者からの情報取得手続とは?
強制執行手続きを行うためにも重要になる「第三者からの情報取得手続」の基本を解説します。
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(1)第三者からの情報取得手続とは何か
「第三者からの情報取得手続」とは、裁判所を通して金融機関や公的機関などの第三者から債務者の財産情報を取得する手続きです。
令和2年の民事執行法改正前から、債務者の財産情報を取得するためには「財産開示手続」という手続きが利用されてきましたが、この手続きでは債務者本人からの情報提供しか受けられませんでした。
債務者が虚偽の陳述をしたり、裁判所の呼び出しに応じなかったりした場合の罰金が少なかったために正確な財産情報が得られず、強制執行を行えないケースが多かったことから、令和2年の改正で財産開示期日に出頭しない場合や虚偽の陳述をした場合に刑事罰が科されるようになりました。
この改正から、さらに第三者から財産情報を取得できるように新設された制度が「第三者からの情報取得手続」です。
申し立てを行うためには以下に挙げられる債務名義が必要になります。- 強制執行認諾文言付き公正証書
- 調停調書
- 和解調書
- 確定判決
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(2)第三者からの情報取得手続で得られる情報
第三者からの情報取得手続を利用すると、以下の3種類の情報を取得することが可能です。
① 預貯金情報や株式情報
預貯金や上場株式、国債などに関する情報(預貯金債権の有無、口座番号、預金残高、株式の銘柄や数量など)は、銀行や信用金庫、証券会社といった金融機関から取得することができます。
② 勤務先情報
勤務先の名称や住所などの情報は、市区町村や日本年金機構などから取得可能です。
③ 不動産情報
土地や建物といった不動産に関する情報は、登記所(法務局)から取得することができます。
2、第三者からの情報取得手続を利用して養育費を回収する流れ
情報取得手続を利用して養育費を回収するまでの流れをみていきましょう。
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(1)裁判所に情報取得手続の申し立てを行う
まずは裁判所に情報取得手続の申し立てを行います。申し立て先は債務者の住所地の管轄をしている地方裁判所です。
なお、不動産と勤務先情報は先に財産開示手続が実施されている必要があります。財産開示手続は少し触れたとおり、裁判所において債務者本人に財産情報を開示させる手続きです。 -
(2)裁判所に申し立て内容が認められれば、第三者機関に情報提供命令が発令される
裁判所によって申し立て内容が認められた場合は、第三者機関に対して情報提供命令が発令され、第三者機関及び手続きを申し立てた人(申立人)に対して情報提供命令の正本が送達されます。
情報提供命令を受け取った第三者機関は、裁判所に対して情報提供書を提出し、その情報が申立人に送付されます。 -
(3)得た情報をもとに相手の財産に対して強制執行を申し立てる
情報を取得したら、その情報をもとに相手の財産に対して強制執行を申し立てましょう。
申立先は強制執行の種類により以下のように異なります。① 債権執行(預貯金や給料を差し押さえる手続き)
債務者の住所地を管轄する地方裁判所
② 不動産執行(不動産を差し押さえる手続き)
不動産のある場所を管轄する地方裁判所
③ 動産執行(宝石や高級時計などの動産を差し押さえる手続き)
動産のある場所を管轄する地方裁判所の執行官室 -
(4)差し押さえた財産を換価して養育費を回収する
強制執行によって財産を差し押さえたら、預貯金や給料の場合はそのまま養育費を回収することができますが、不動産や動産はそのまま受け取ることはできません。
土地や建物などの不動産や宝石や自動車などの動産を差し押さえた場合は、売却して金銭に換えてから養育費を回収します。
お問い合わせください。
3、養育費を支払ってもらうための対処法
相手に養育費を支払ってもらうための対処法を5つご紹介します。
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(1)養育費の支払いに関する公正証書や調停調書などの書類を作成しておく
離婚時に養育費の支払いに関して話し合いで取り決めた場合は「公正証書」を作成しておくことをおすすめします。「公正証書」は公証役場で公証人によって作成される公文書です。
養育費の支払い義務者が養育費を取り決め通りに支払わない場合に備え、「履行義務が滞ったら強制執行することに双方合意している」といった文章(強制執行認諾文言)を公正証書の内容に組み込めば、調停や裁判を行わずに強制執行手続きを行うことができます。
また、離婚調停で養育費について取り決めた場合は、裁判所に「調停調書」を作成してもらえます。この調停調書も、公正証書と同様に、養育費の支払いが滞った場合に裁判を経ずに強制執行できる有効な手段です。
こうした書面があることで、「給料を差し押さえられて、養育費の支払いをしていないことが職場にバレると困る」という義務者に対しても、支払いを促す現実的な圧力となり得ます。養育費の確実な受け取りのためには、離婚時にこのような手続きを整えておくことが非常に重要です。 -
(2)相手との話し合いで解決を目指す
養育費が取り決めの通りに支払われない場合、相手と話し合って解決を目指しましょう。ここで解決できれば裁判などの時間・費用がかかる手続きをとる必要がありません。
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(3)養育費調停・審判を利用する
養育費について離婚時に取り決めていない場合は、養育費調停・審判を利用しましょう。
養育費調停は、調停委員を仲介役として養育費について話し合い、トラブルを解決するための制度です。裁判のように第三者から判決を下されるようなことはないため、当事者同士が納得すれば養育費の金額や支払期間など自由に決めることができます。
一方の養育費審判は、裁判官によって養育費に関するトラブルへの審判が下されるという制度です。調停不成立の場合は自動的に養育費審判に移行します。
離婚調停とは異なり、養育費調停には調停前置主義(裁判よりも先に調停を申し立てなければならないという法律上のルール)が適用されないため、養育費調停ではなくいきなり養育費審判を申し立てることも可能です。 -
(4)内容証明郵便で請求する
養育費について取り決めていた場合、支払いが滞ったら内容証明郵便で請求するという方法もあります。内容証明郵便は、書面内容や送付日などを日本郵便が証明するサービスです。
内容証明郵便で支払い請求することで、精神的プレッシャーを感じた相手が自主的に支払ってくれる可能性もあります。 -
(5)履行勧告や履行命令を申し立てる
話し合いや内容証明郵便での請求もうまくいかなかった場合は、裁判所に履行勧告や履行命令を申し立てましょう。
「履行勧告」は、調停や審判で取り決めた内容を守らない義務者に対して、家庭裁判所から「養育費の支払い義務を履行しなさい」と勧告してもらう手続きです(家事手続法第289条1項)。強制力はありませんが、裁判所から書類が届くことで相手にプレッシャーがかかり、支払いに応じてもらえる可能性があります。
履行勧告を無視された場合、「履行命令」の手続きを行いましょう。「履行命令」は、義務者に対して裁判所から「養育費の支払い義務を履行しなさい」という履行命令を出してもらう制度です。
履行勧告と同様に強制力はありませんが、履行命令に従わない場合は10万円以下の罰金(過料)を課される可能性があるため、履行勧告よりも支払いに応じてもらえる可能性があるでしょう。
4、養育費のトラブルは弁護士に相談を
養育費に関するトラブルは弁護士への相談がおすすめです。
養育費を支払わない相手との交渉は、当事者だけで行うと感情的になり、話し合いがこじれてしまうおそれがあります。依頼を受けた弁護士は、養育費についての交渉を代行できるため当事者同士の話し合いよりも冷静に円滑に進められる可能性が高いです。
また、弁護士に依頼すれば、第三者からの情報取得手続や強制執行手続き、調停や審判といった煩雑な法的手続きを任せることもできます。
さらに、精神的な負担がかかる相手との交渉や法的手続きを弁護士に任せることで、精神的負担が軽減するでしょう。
養育費は子どもの健全な成長のためにも大切なものです。養育費に関するトラブルは早めに弁護士に相談するのが得策といえます。
5、まとめ
第三者からの情報取得手続とは、裁判所を通じて相手の財産に関する情報を得られる手続きのことであり、銀行の預貯金、不動産、勤務先情報などを取得することができます。この取得情報をもとに、養育費の強制執行ができる可能性があります。
強制執行やその他法的手続きをスムーズに進めるためには、弁護士に相談することをおすすめします。養育費等の未払いにお悩みの際は、離婚トラブルの実績が豊富なベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士にまずはご相談ください。
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