酒気帯び運転は即免許取り消しに? 処分の流れと回避策

2025年05月14日
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酒気帯び運転は即免許取り消しに? 処分の流れと回避策

岩手県庁が公表する「岩手県交通安全対策協議会 交通安全対策情報」によると、令和6年の飲酒運転検挙数は岩手県全体で290件、そのうち盛岡市は79件でした。飲酒運転には、酒気帯び運転も含まれます。

酒気帯び運転をしてしまったら、行政処分(免許停止や取り消しなど)に加え、刑事処分(拘禁刑や罰金刑など)を受ける可能性があります。ただし、弁護士のサポートを受けて「酌むべき事情」を的確に主張できれば、処分の減軽が認められる場合もあるため、あきらめずに対応することが重要です。

本コラムでは、酒気帯び運転の定義や処分対象となる基準、処分を減軽するためにできることなどを、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。

出典:「岩手県交通安全対策協議会 交通安全対策情報 2月号」(岩手県庁)


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1、酒気帯び運転で免許取り消し処分になる基準と流れ

まずは、酒気帯び運転で免許取り消しになる基準と、処分の流れについて確認しましょう。

  1. (1)酒気帯び運転とは?

    酒気帯び運転とは、呼気(吐く息)のうち1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上検出される状態で運転することです。

    酒気帯び運転は、道路交通法第65条で禁止されており、違反すると行政処分として自動車運転免許が停止や取り消しになる可能性があります

    以下のように、呼気に含まれるアルコール濃度によって、違反点とそれに伴う行政処分が変わります。

    呼気1リットル中のアルコール濃度 違反点 行政処分
    0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満 13点 90日間の免許停止処分
    0.25ミリグラム以上 25点 免許取り消し
    欠格期間 2年間(※)

    ※「欠格期間」とは、運転免許の取消処分を受けた人が、免許を再取得できない期間のことです。

    違反の前歴や違反点は蓄積されるため、他に違反歴があればそれに応じて行政処分が重くなることに注意しましょう。

  2. (2)前歴があると必ず免許取り消しになる

    前歴が1回でもある場合、呼気のアルコール濃度が0.25ミリグラム未満だった場合でも必ず免許取り消しになります
    前歴とは、過去3年間に免許停止または免許取り消しとなった回数を指します。

    前歴なしの場合であれば免許取り消し処分になるのは、違反点が15点以上の場合です。しかし、前歴が1回ある場合は10点以上で免許取り消し処分となってしまいます。そのため、0.25ミリグラム未満のアルコール濃度で捕まり、違反点13点がつくと免許取り消しとなるのです。

    なお、アルコール濃度が0.25ミリグラム以上だった場合は、前歴がなくても違反点は15点を超えるため、免許取り消しとなります。

  3. (3)免許取り消しによる欠格期間

    免許取り消しによる欠格期間(免許を再取得できない期間)は、アルコール検出量と前歴の回数によって異なります。それぞれ次のように定められています。

    【アルコール0.25ミリグラム未満の場合】
    前歴 欠格期間
    なし -
    1回 1年
    2回 1年
    3回 2年
    4回以上 2年


    【アルコール0.25ミリグラム以上の場合】
    前歴 欠格期間
    なし 2年
    1回 2年
    2回 3年
    3回 4年
    4回以上 4年
  4. (4)免許取り消し処分の流れ

    次に、酒気帯び運転で免許が取り消される流れについて確認しましょう。

    ① 酒気帯び運転の発覚
    警察官による検問や職務質問をはじめ、交通違反や交通事故がきっかけで呼気検査を受けた際に酒気帯び運転が発覚することがあります。
    呼気検査では警察官が直接アルコール濃度を測定するため、検査を拒否したり妨げたりすれば、現行犯逮捕されることもあります。呼気検査を拒むことは難しいでしょう。

    ② 警察による事情聴取や現場捜査
    検問などで飲酒が検知された場合、事情聴取を受けることになります。また、警察が記録する書類への署名を求められることもあります。交通違反や交通事故がきっかけとなった場合は、現場捜査が行われます。
    場合によっては改めて事情聴取が行われるため、「任意出頭」が要請される可能性があります。
    任意出頭とは、警察や検察の求めに応じて、強制ではなく自分の意思で警察署や検察庁に出向くことです。強制的に呼び出される「出頭命令」と異なり、任意出頭は出頭するかどうかは本人の自由となります。ただし、警察が出頭を求める場合、協力しないと不利に働く可能性もあるため、できるだけ応じた方がよいでしょう。

    ③ 警察の行政処分課等による手続き
    現場で集められた事実関係をもとに、警察内の行政処分課などが違反点数を検討し、運転免許の処分に関する手続きを行います。

    ④ 公安委員会による意見の聴取
    免許が取り消しの処分が決定される場合、公安委員会による意見聴取の場が設けられます。ここでは、違反者が弁明し、事情や意見を述べることができます。

    ⑤ 行政処分の通知
    聴取の内容を踏まえて、最終的な行政処分の内容が確定します。結果は、意見聴取当日に発表されます。
    意見の聴取を経ずに免許取り消しが決まる場合は、後日郵送で「運転免許取消処分書」が届きます。

2、酒気帯び運転は刑事処分となる可能性もある

酒気帯び運転は、刑事上の処分を受けることもある犯罪です。そのため、警察や検察での取り調べ・逮捕・勾留・起訴の可能性があり、刑罰が科されるおそれもあります。

酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(道路交通法第117条の2の2)。刑事処分においては、アルコール量によって処分内容が変わるわけではありません。ただし、初犯かどうかや事故を起こしたかどうかなどが、起訴や刑罰の重さに影響を与えることがあります。

※令和7年6月までは懲役刑が適用されます。

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3、免許取り消し処分を減軽するための「意見の聴取手続き」とは

酒気帯び運転が発覚すると、処分を受ける前に公安委員会に対して意見を述べる機会が与えられます。どのような手続きなのか、対象者や期間、処分減軽のためにできることについて解説します。

  1. (1)意見の聴取手続きの意義と対象者

    意見の聴取は、酒気帯び運転をしてしまった違反者が、自分に有利な証拠や反省文を提出したり、弁護士などのサポートを受けたりして弁明することができる機会です。これは、公安委員会が主催します。

    違反者には、さまざまな事情がある場合があります。たとえば、飲酒後に家族が急病になったなどの事情が考えられます。このような情状酌量の対象とするべき事情がある場合、それに基づいて処分を軽減することが可能です。公平に処分を検討するために、意見の聴取手続きは実施されています。

    意見の聴取の対象者は、次のとおりです(道路交通法第104条)。

    • 90日以上の免許停止処分となる予定の方
    • 免許取り消し処分となる予定の方
  2. (2)通知から手続きまでの流れとスケジュール

    ここからは、意見の聴取の通知から手続きまでの流れを見てみましょう。

    ① 開催1週間前まで:意見の聴取の通知を受け取る
    意見の聴取の開催日時・場所・処分理由などが記載された書面が届きます。また、公安委員会の掲示板にも掲出されます。

    ② 通知された日時:出頭する
    通知された日時に出頭し、質疑応答を行い、意見を陳述します。代理人に同行してもらうことも可能です。また、口頭での意見陳述に加えて、反省文や上申書などを提出することもできます。

    ③ 意見の聴取後:処分が決まる
    意見聴取が終わり、免許取り消しになった場合は、その日に「運転免許取消処分書」が渡されます。意見を踏まえて取り消しを回避でき、免許停止となった場合は「運転免許停止処分書」が渡されます。処分書を渡されたときが処分の執行開始時点となり、意見の聴取当日が免許停止や免許取り消し期間の1日目となります。
  3. (3)意見の聴取に欠席したらどうなる?

    意見の聴取は弁明の機会であり義務ではないため、欠席しても問題ありません。

    ただし、欠席すれば、処分減軽を目指すために直接意見を伝えられる機会を得られません。警察や公安委員会がすでに収集した証拠や情報をもとに処分が決まってしまうため、できるだけ出席して意見を述べることが推奨されます。

4、処分減軽のためにやるべきこと

酒気帯び運転の際に「酌むべき事情」があると認められれば行政処分が減軽されることがあります。

  1. (1)「酌むべき事情」を主張する

    警察庁交通局長の通達によると、処分減軽が認められる「酌むべき事情」には次のようなものがあります。

    • 危険性が低いと評価すべき特段の事情があるとき
    • 不注意の程度が極めて軽微で事故がもっぱら相手側の不注意で発生したとき


    具体的には次のようなことは「酌むべき事情」に該当すると考えられています。

    • 酒気帯び運転で起こした事故の被害が小さいとき
    • 酒気帯び運転だったが危険性が低いとき
    • 誰かから強制された違反であったとき
    • 災害や患者搬送などやむを得ない事情があったとき
    • 薬の副作用で相当時間が経過してもアルコールが残っていたとき
    • 間違ってアルコール飲料を提供され本人が気づかず飲んでいたとき

    出典:「『運転免許の効力の停止等の処分量定基準』の改正について」(警察庁交通局長)

    これらの事情は公安委員会による意見の聴取手続きで考慮されることはありますが、その評価や減軽の程度は個別ケースの具体的状況と証拠によって異なります。

  2. (2)反省文や上申書を作成する

    反省文や上申書を作成して提出することで、酌むべき事情や反省が伝わり、処分減軽につながることがあります。

    反省文や上申書に決まった形式はありませんが、事件発生日・文書作成日・氏名・住所は必ず記載するようにしましょう。また、手書きよりもパソコンなどで読みやすいものを提出するほうがよいでしょう。

    処分減軽につながりやすい内容としては、以下のようなポイントが挙げられます。

    • 違反や事故の事実を受け入れる
    • 違反の理由を伝える
    • 反省の意を盛り込む
    • 減軽が認められそうな要因を主張する
    • 再発防止策を記載する
    • 寛大な処分をお願いする
  3. (3)証拠を集めて提出する

    証拠があれば、より処分が減軽される可能性は高まります。たとえば、次のようなものが証拠として有効です。

    • ドライブレコーダーの記録
    • 病院の診断書や処方箋
    • 同乗者や飲食店スタッフなどの証言


    これら証拠の収集が難しい場合でも、状況や反省の意を示すことが重要です。

    ただし、酒気帯び運転で「酌むべき事情」を認めてもらうことは非常に難しく、行政処分が軽減されることは容易ではありません。処分軽減の可能性があるかどうかについては、一度弁護士に相談してみるといいでしょう

5、免許取り消し回避や処分減軽のために弁護士ができること

免許取り消し回避や処分減軽を目指すには、弁護士に依頼するのがおすすめです。免許や交通事故に詳しい弁護士なら、免許取り消し回避や処分減軽のために次のようなサポートが可能です。

① 情状酌量の事由の整理
情状酌量の事由、つまり「酌むべき事情」がきちんと伝わらなければ、免許取り消し回避や処分減軽にはつながりません。弁護士はこれまでの経験から、違反者の主張が情状酌量事由に該当するかどうかを判断し、伝え方を工夫して、公安委員会の納得が得られるよう整理します。

② 書面の資料作成
情状酌量の事由の整理が済んだ後、提出書類の作成を弁護士に任せることも可能です。提出書類には、減軽が認められそうな要因はもちろん、反省の意や再発防止策も盛り込み、簡潔にまとめる必要があります。
弁護士なら、法的観点から免許取り消し回避や処分減軽につながりやすい内容で書類を作成することができます。

③ 意見の聴取への同席
弁護士は付添人として意見の聴取に同席することができます。聴取の際に緊張して自分で適切に説明ができない場合などに弁護士のサポートを受けられるため安心です。

6、まとめ

酒気帯び運転は、行政処分に加えて刑事処分の対象にもなります。「酌むべき事情」があったとしても、意見の聴取手続きの場で、処分の軽減が認められることは難しいことが多く、免許停止や免許取り消しなどの厳しい処分が下されてしまうかもしれません。

意見の聴取への出席や厳しい処分が不安な方は、交通事故や交通違反の解決実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします

ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスにご相談いただければ、免許取り消し回避や処分減軽に向けて適切にサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています