盗撮目的での建造物侵入は初犯でも逮捕される? 問われる罪や対処法
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岩手県警の統計によれば、令和5年の盛岡市の刑法犯の総数は973件で、そのうち住居侵入や侵入窃盗の件数は79件に上りました。
もし盗撮目的で住居侵入してしまった場合、初犯であったとしても逮捕される可能性は十分にあります。
本記事では、盗撮目的の建造物侵入で問われる罪・逮捕後の流れ・逮捕回避のために取るべき対応について、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。
出典:「犯罪等統計情報(令和5年)」(岩手県警)
1、盗撮目的での建造物侵入で問われる罪
盗撮目的で住居や建造物に侵入した場合、住居侵入罪または建造物侵入罪に該当する可能性があります。また、盗撮そのものについても、撮影罪(性的姿態等撮影罪)や迷惑防止条例違反に該当するおそれもあります。
それぞれの成立条件・法定刑・盗撮目的で侵入した際の刑罰について見てみましょう。
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(1)住居侵入罪・建造物侵入罪の成立条件
誰かの家やビルなどの建物に、正当な理由がなく無断で立ち入った場合、「住居侵入罪」や「建造物侵入罪」に問われる可能性があります。
住居侵入罪は、一軒家やマンションの部屋など、人が日常生活に使用している場所への侵入で成立する罪です。
一方、建造物侵入罪は、オフィスビル・学校・商業施設・駅舎など、住居以外で誰かが管理支配している建物への侵入で成立する罪です。 -
(2)住居侵入罪・建造物侵入罪の法定刑は?
住居侵入罪と建造物侵入罪の法定刑は、いずれも3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です(刑法第130条)。
また、これらの罪は未遂であっても罰せられる罪であることに注意が必要です(刑法第132条)。たとえば、侵入には至っていなくても、施錠されているドアの鍵を不正な手段で開けた場合などには、住居侵入罪や建造物侵入罪が問われる可能性があります。 -
(3)盗撮目的だと刑罰が重くなる?
住居侵入や建造物侵入が盗撮目的であった場合は、牽連犯(けんれんぱん)として刑罰が重くなるおそれがあります。
牽連犯とは、いくつかの犯罪が「目的と手段」または「原因と結果」になっているときに該当する犯罪形態です(刑法第54条1項)。
牽連犯では、複数の犯罪をまとめて一つとして扱い、もっとも重い犯罪の刑罰が科されます。
住居侵入罪と建造物侵入罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または10万円以下」となります。一方、性的な姿態を盗撮した場合は、撮影罪(性的姿態等撮影罪)に該当する可能性があり、法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。
したがって、盗撮目的でこれらの牽連犯とされた場合は、もっとも重い撮影罪の「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が適用される可能性があるのです。
2、初犯でも建造物侵入で逮捕される?
初犯であっても、犯罪行為をすれば逮捕されるおそれは十分にあります。ここからは、初犯でも逮捕される可能性がある事情についてご紹介します。
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(1)初犯であっても逃亡・罪証隠滅のおそれがあれば逮捕される
逮捕されるのは、逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合です。次のようなケースでは逮捕の可能性が高まるでしょう。
① 逃亡のおそれがあると考えられやすいケース
- 定職についていない
- 一人暮らしをしている
- 現行犯で捕まりそうになった際に逃げ去った
② 罪証隠滅のおそれがあると考えられやすいケース- 捨てられる物的証拠を持っている
- 共犯者がいる
- 犯行をしたことが明らかであるにもかかわらず否認する
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(2)その場から逃れても通常逮捕(後日逮捕)のおそれがある
盗撮目的で住居や建造物に侵入し、その場から逃れたとしても、後日逮捕となるおそれがあります。後日逮捕は、通常逮捕とも言います。
通常逮捕となる可能性が高いのは、次のような証拠から被疑者として特定されたときです。- 防犯カメラ映像
- 目撃者などの証言
- 指紋やDNA鑑定
なお、令和6年の盗撮による撮影罪(ひそかに撮影)の検挙件数迷惑防止条例違反の検挙件数のうち、事件が発生した場所としてとくに多かったのは次の場所です。
場所 検挙件数 商業施設等 2275件(36.1%) 駅構内 1369件(21.7%) 住宅等 598件(9.5%) 出典:「令和6年中の痴漢・盗撮事犯に係る検挙状況の調査結果」(警察庁生活安全局生活安全企画課)
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3、建造物侵入で逮捕された後の流れ
建造物侵入によって逮捕されてしまった場合、以下のような流れで刑事手続きが進みます。
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(1)通常逮捕(後日逮捕)
通常逮捕が行われるのは、原則として裁判所が発行する逮捕状がある場合に限られます。
警察は犯行を把握すると捜査を進め、被疑者を特定できた段階で裁判所に逮捕状の発行を請求します。裁判所が請求を認めれば逮捕状が発行され、警察は、これを被疑者に示して身柄を確保します。
逮捕された被疑者は留置場に収容され、警察官による取り調べを受けます。その際、建造物侵入や盗撮の事実について詳しく事情を聴取されます。 -
(2)送検
警察官は、逮捕した被疑者の供述や証拠によって、検察官に事件を引き継ぐかどうかを判断します。検察官に事件を引き継ぐ手続きを、送検や送致と言います。
送検が決まったら、被疑者の身柄や捜査資料が検察官へ引き渡されます。送検しないことが決定した場合は、その時点で事件終了です(刑事訴訟法第246条)。ただし、送検自体は行われるものの身柄は釈放され、在宅事件として捜査が進むケースもあります。
なお、送検されるかどうかは、逮捕から48時間以内に決まります。 -
(3)勾留
警察から被疑者の身柄を引き継いだ検察官は、さらに被疑者を取り調べます。そのうえで、検察官は24時間以内に勾留するかどうかを決定します。勾留とは、引き続き身柄を拘束して捜査を進める手続きです。
被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合、検察官は裁判所へ勾留請求を行い、裁判官が認めれば身柄拘束の継続が許されます。
勾留が決まれば原則10日間、身柄拘束が続きます。必要に応じてはさらに延長されることもあります。 -
(4)起訴・不起訴の判断
勾留期間が終わるまでに、検察官は被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定します。起訴となった場合、刑事裁判が開かれます。不起訴となった場合は、裁判は開かれません。
起訴されるかどうかは、次のような要素で決まるとされています。起訴・不起訴の判断要素- 犯罪の重さ
- 犯行の性質
- 前科の有無
- 被疑者の年齢
- 被疑者の性格
- 被疑者の反省度合い
- 被害者との示談の有無
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(5)刑事裁判
起訴されれば刑事裁判が開かれます。原則として公開の法廷で行われ、裁判官の前で証言などをしなければなりません。
日本の刑事裁判における有罪率は99%以上です。そのため、なるべく早い段階で逮捕回避・身柄解放・不起訴獲得に向けて動くことが重要です。
4、建造物侵入の初犯で逮捕されないためにできることは?
初犯であっても逃亡や罪証隠滅の恐れがあると判断された場合には逮捕されるおそれがあります。
では、建造物侵入をしてしまった場合、逮捕されないためにはどのような対策ができるのでしょうか。
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(1)被害者との示談を成立させる
盗撮や建造物侵入は、被害者が存在する犯罪です。そのため、被害者との示談が成立すれば逮捕を回避できる可能性が高まります。
示談交渉を進めている時点で、逮捕の要件である「逃亡や証拠隠滅のおそれ」が低いと判断されやすくなります。さらに、示談が成立して被害賠償ができていれば、警察や裁判所にも反省の意を示すことができます。
結果として、事情聴取は行われても、「逮捕までは不要」と判断されるケースもあります。 -
(2)自首を検討する
事件がまだ発覚していなくても、建造物侵入をした事実があるならば自首を検討すべきです。自ら罪を認めれば、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと捉えられやすく、逮捕回避につながる可能性があります。
また、万が一刑事裁判となり有罪判決が下るとしても、自首をしていれば減刑される可能性があります(刑法第42条)。ただし、自首であると認められるには、「犯罪や犯人がまだ発覚していない段階」で申し出る必要があるため、タイミングには注意が必要です。 -
(3)刑事事件に強い弁護士に相談する
示談交渉や自首をはじめ、逮捕回避のために対策するなら、まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談することが大切です。
そもそも加害者が被害者との示談交渉を行うのは難しく、被害者が話し合いに応じないばかりか、危険がおよぶと考えて通報、場合によっては逮捕されてしまうおそれもあります。
また、加害者だけでも自首は可能ですが、弁護士が同行すれば「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」「真摯に反省している」といった点を的確に伝えることができます。
さらに、万が一逮捕されてしまっても、刑事事件に強い弁護士であれば次のようなサポートが可能です。- 取り調べへの対応をアドバイスする
- 警察官や検察官と早期釈放に向けて交渉する
- 反省文や誓約書の作成をサポートする
- 意見書を提出する
- 再犯防止策を策定する
5、まとめ
盗撮や建造物侵入をしてしまった場合、初犯であっても逮捕される可能性は否定できません。
逮捕を避けるためには、被害者との示談や自首といった対応が有効ですが、本人だけで行うのは難しいものです。万が一逮捕となった場合の対策も踏まえ、なるべく早い段階で、刑事事件に強い弁護士に相談することが重要です。
ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスには、刑事事件の実績が豊富な弁護士が在籍しています。建造物侵入をしてしまい逮捕が不安な方は、ひとりで悩まずいつでもご相談ください。
逮捕回避・身柄釈放・不起訴処分の獲得などに向けて、丁寧にサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
