相続放棄の前に財産調査をしたほうがよいケースとは? 調査方法を解説

2026年02月16日
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相続放棄の前に財産調査をしたほうがよいケースとは? 調査方法を解説

「令和5年 司法統計年報(家事編)」によると、令和5年度には全国の家庭裁判所で28万2785件の相続放棄の申述が受理されています。

相続放棄の受理件数は年々増加傾向にあり、負債の相続を避けたい、維持管理が困難な不動産を引き継ぎたくない、といった背景があると考えられます。

本コラムでは、相続放棄の前に知っておきたい財産調査の役割や調査方法などについて、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。


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1、相続放棄の判断材料となる財産調査とは?

遺産相続における財産調査とは、故人(被相続人)の財産を洗い出す作業です。預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続対象となるため、漏れなく調査する必要があります

財産調査を行うことで、感情や推測ではなく、客観的な根拠に基づいて相続放棄するか否かを決めることができます。

しかし、相続放棄は一度選択すると原則として撤回ができません。後悔のない選択をするためにも、相続放棄を検討する場合は、まず財産調査から行うことをおすすめします。

2、相続財産調査が必要な3つの理由

相続が発生した際、なぜ相続財産の調査が必要とされているのでしょうか?

以下では、財産調査が必要となる主な理由について解説します。

  1. (1)適切な相続手続きを選ぶため

    財産調査は、相続するか放棄するかといった手続きの選択に直結する判断材料になります

    たとえば、借金のほうが多い場合は相続放棄を選ぶことが合理的です。しかし、プラスの財産が明らかに多ければ、そのまますべてを相続する「単純承認」を選ぶことも可能です。

    財産の全体像が不明なまま判断してしまうと、追加の資産や負債の存在が判明した場合にトラブルになりかねません。

    また、相続放棄には「相続開始を知ったときから3か月以内」の申述期限があるため、財産調査は早めに進めることが望ましいです

  2. (2)遺産分割を正しく行うため

    遺言書がなく相続人が複数人いる場合は、相続人全員でどのように遺産をわけるかを決める「遺産分割協議」を行う必要があります。しかし、どの財産がどれだけあるのかが確定していなければ、公平な遺産分割が行えません。

    また、遺産分割協議後に新たな財産が発覚し、遺産分割に影響を与える場合には協議をやり直さなければなりません。

    財産調査は、遺産分割を公平に進めるための土台となる作業です遺産分割を行う前にすべての財産を洗い出し、評価額を確定しておきましょう

  3. (3)相続税申告を正しく行うため

    相続税を正しく申告するためには、適切に財産調査を行い、相続税額を算出する必要があります

    相続税申告が必要となるのは、故人の財産総額が相続税の基礎控除額を超えるケースです。相続税申告には期限が定められており、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

    申告漏れや財産の過少申告があると、加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性もあるため注意が必要です。

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3、相続放棄の前に財産調査したほうがよいケース

後悔のない相続放棄を行うためには、「放棄すべきかどうか」を判断する根拠が必要です。以下では、相続放棄の前に財産調査をしておくべき代表的なケースを具体的に見ていきましょう。

  1. (1)財産が多く把握しきれていない

    故人が保有していた財産が多くて把握しきれていない場合は、すべての財産を調査するのは簡単ではありません。しかし、このような場合こそしっかりと財産調査をすべきです。

    相続放棄は原則として撤回できないため、相続放棄後に高額な資産が発見されても、取り戻すことはできません。

    とくに、故人が生前に投資をしていた場合や不動産を複数所有していた場合は、資産価値の合計額が大きくなりやすいです。資産を見逃してしまわないよう、早い段階で調査を行いましょう。

  2. (2)負債があるかもしれない

    借金やローンなど多額の負債があるかもしれない場合は、相続放棄を検討すべきです。しかし、内訳がわからないまま相続放棄すると思わぬトラブルが生じるおそれもあるため、財産調査を行ったうえで判断することをおすすめします。

    とくに故人の借金の「連帯保証人」になっていた場合は、相続放棄をしても保証人として返済責任が残るため注意が必要です。

    どのような性質の負債があるのかを確認するうえでも、財産調査は有効な手段となります。

  3. (3)故人が不動産を所有していた

    故人が不動産を所有していた場合も、財産調査したほうがよいケースのひとつです。

    不動産は資産価値が高い一方で、維持管理や固定資産税の負担も発生します。

    相続放棄をすると、放棄した人は最初から相続人でなかったものと扱われ、結果として次順位の相続人に相続権が移ります。不動産の内容を把握しないまま相続放棄をすると、ほかの相続人との間でトラブルが生じるおそれがあるため、事前に調査しておくことが重要です

    また、相続放棄をした場合でも、放棄の時点で相続財産を現に占有しているときは、次の管理者が決定するまでは一定の保存義務が残る点にも注意が必要です。

  4. (4)自宅の名義が故人かもしれない

    現在住んでいる自宅の名義が、故人名義のままになっている可能性がある場合も、財産調査すべきといえます故人名義の自宅を相続放棄すると、その家に住み続けられなくなる可能性があるためです

    このようなケースでは、家の名義や登記状況を確認し、相続放棄によって生活に支障が出ないかを事前に検討する必要があります。

    自宅が故人名義であった場合は、自身で相続するのかほかの相続人に相続してもらうのか、慎重に判断しましょう。

4、ケース別│相続財産の調査方法

相続放棄を検討するうえで財産調査は重要ですが、調査方法は財産によって異なるため注意が必要です。以下では、相続対象となる主要な財産について、それぞれの調査方法を解説していきます。

  1. (1)預貯金や有価証券の調査方法

    故人の預貯金は、相続財産の中でも代表的な項目ですまずは通帳・キャッシュカード・郵送物などを手がかりに、取引先の金融機関を特定しましょう

    有価証券については、証券会社からの取引報告書や配当金通知書などの郵送物をもとに調査します。取引している証券会社が特定できない場合は、証券保管振替機構に情報開示請求を行うことで確認できる場合があります。

    最近ではネット銀行やネット証券の利用者も多いため、メールの履歴やID・パスワードの記録も確認しておきましょう。

    金融機関や証券会社が判明したら、各窓口で残高や保有資産の照会を依頼します。

  2. (2)不動産の調査方法

    不動産を調査するには、まず固定資産税の納税通知書や登記済権利証(または登記識別情報通知)などを手がかりに不動産を特定します

    これらの書類が見つからない場合は、不動産のある市区町村役場で「名寄帳」を取得して確認しましょう。名寄帳とは、納税義務者が個人で所有している不動産を一覧にした書類です。

    不動産の地番と家屋番号が特定できたら、法務局で登記事項証明書を取得し、権利情報を確認します。その後は評価額を調べますが、不動産の評価方法は複雑なため、正確に算出したい場合は専門家へ相談することをおすすめします。

  3. (3)貴金属の調査方法

    貴金属は、「動産」に分類される財産です。動産とは、美術品・骨董品・家具など、不動産以外の一般的な「物」の財産を指します。

    貴金属を調査する際は、まず現物を発見する必要があります。金庫やタンス・押し入れなど、故人の自宅内を丁寧に確認しましょう。

    自宅で見つからない場合には、貸金庫などに保管されているケースもあります。貴金属の評価額については、鑑定士に査定を依頼することが確実です。

  4. (4)負債の調査方法

    負債の調査は抜け漏れが発生しやすいため、慎重に行う必要があります

    調査方法としては、督促状・返済案内・明細書などの郵送物を確認することが基本です。また、故人が利用していた銀行口座の引き落とし履歴から、定期的な返済が行われていた形跡がないかも確認しましょう。

    さらに、信用情報機関に情報開示請求をすることで、借入状況の情報の取り寄せも可能です。信用情報機関にはJICC・CIC・全国銀行個人信用情報センターの3つの機関があるため、それぞれに請求する必要があります。

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5、正確な財産調査は弁護士に相談を

相続放棄を適切に判断するためには、財産の全容を漏れなく、かつ正確に把握する必要があります。しかし、財産調査には金融機関や公的機関への問い合わせ・登記情報の確認・負債の洗い出しなど、複雑な手続きが伴います。

漏れなく効率的に財産調査を進めたい場合には、相続に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。弁護士には、手間のかかる財産調査を一任できます。

早い段階で弁護士に相談することで、相続放棄の申述期限を過ぎることなくスムーズに財産調査を終えられるでしょう。

6、まとめ

相続が発生した際、相続放棄をするかどうかは重要な判断のひとつです。その選択を誤らないためには、事前に財産調査を行う必要があります。

しかし、相続人だけで調査を進めるのが難しいと感じるケースもあるでしょう。相続放棄の判断や財産調査の進め方に疑問があるときは、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで、将来的なトラブルを防ぎつつ、最適な判断ができる可能性が高まります。相続問題で悩んだときはひとりで抱え込まず、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています