飲酒運転の追突事故被害に遭ったら? 対処法や慰謝料について解説
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警察庁の「飲酒運転による交通事故件数・死亡事故件数の推移」によると、令和6年の飲酒運転による交通事故件数は全国で2346件でした。
飲酒運転は、死亡事故にもつながるおそれのある非常に危険な行為です。運転中に突然飲酒運転の車に追突されてしまったら、どのように対応すべきか悩む方は多いでしょう。
本コラムでは、飲酒事故に遭ったときの対応や過失割合・損害賠償金などについて、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。
1、飲酒運転の車に追突されたときの対応の流れ
飲酒運転の車に追突された場合は、冷静に対処し、事故直後から適切な行動を取ることが重要です。以下では、事故後の基本的な対応の流れを解説していきます。
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(1)まずは警察に通報する
飲酒運転による追突事故に巻き込まれた際は、まず警察に通報します。
飲酒運転は刑事事件としても扱われる違法行為であり、警察の介入によって証拠が適切に記録されます。通報を怠ると「交通事故証明書」が発行されず、事故の補償を受けられなくなる可能性があるため注意が必要です。
被害者としての補償を確保するためにも、事故現場での110番通報は必ず行いましょう。 -
(2)加害者や証人を特定しておく
加害者や現場の証人の情報を、できるだけ正確に記録しておくことも重要です。
飲酒運転事故では、加害者がその場から逃走してしまうケースも少なくありません。ナンバープレートを記録したり、名刺や免許証の提示を求めたりするなどして、加害者の身元を特定できる情報を確保しましょう。
また、追突事故を目撃した第三者がいれば、氏名や連絡先を聞いておくことが望ましいです。目撃者の証言は有効な証拠となるため、情報を控えておけば後の交渉や裁判などで有利にはたらく可能性があります。 -
(3)病院で適切な診断・通院をする
事故後すぐに自覚症状がない場合でも、必ず医療機関で診断を受けましょう。
事故発生時にはケガをしていない、または軽傷だと思っていても、後に重いけがであったことがわかる場合があります。早期に医師の診断を受けておかないと、事故との因果関係が認められず、治療費や慰謝料の請求が難しくなる可能性があります。
受診後は、医師の指示に従って継続的に通院することも大切です。通院回数や治療期間は慰謝料の算定にも影響を与えるため、定期的な診察を受けながら記録をしっかり残しておきましょう。 -
(4)加害者側の保険会社と示談交渉
事故後しばらくはケガの治療に専念し、治療が終了したら加害者側と示談交渉を行います。加害者が任意保険に加入していれば、任意保険会社の担当者と交渉を行うことになります。
通常は保険会社の担当者から示談金が提示されるため、その金額が妥当かどうかを検討しましょう。しかし、法律知識がなければ適切な示談金を判断するのは困難です。
提示された内容をよく確認し、不明点があれば弁護士に相談することをおすすめします。
2、加害者が飲酒運転をしていた場合の過失割合
加害者が飲酒運転をしていた場合、通常よりも加害者側の過失割合が大きくなる可能性があります。過失割合とは、交通事故の当事者双方にどの程度の責任があるかを数値で示したものです。
以下では、過失割合の判断に影響する飲酒運転の種類や、過失割合の加算・修正がどのように行われるかについて解説していきます。
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(1)飲酒運転には酒気帯び運転と酒酔い運転がある
飲酒運転は、法律上「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に分かれています。それぞれの定義は、以下のとおりです。
飲酒運転の種類 概要 酒気帯び運転 呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上、または血中アルコール濃度が0.3mg/mL以上ある状態での運転 酒酔い運転 アルコールの影響により、正常な運転ができないおそれがあると判断される状態での運転
体内に基準値を超えるアルコールを保有していれば、「酒気帯び運転」となります。
一方で、ふらついている・ろれつがまわっていないなど、運転者の酩酊が認められるケースでは「酒酔い運転」に該当します。 -
(2)飲酒運転の場合、加害者側の過失割合が加算される可能性がある
加害者が飲酒運転をしていた場合、過失割合が加算される「修正要素」として扱われる可能性があります。過失割合の修正要素とは、事故の個別の状況に応じて、基本となる過失割合に加算または減算すべき事情のことです。
酒気帯び運転の場合であれば、「著しい過失」として、過失割合が5~20%程度加算されるケースが多いでしょう。また、より悪質な酒酔い運転は、「重過失」として過失割合が10~20%程度加算される場合もあります。
過失割合は示談金にも影響するため、被害者にとって有利な過失割合に修正されれば、受け取れる金額が増額する可能性があります。 -
(3)飲酒が過失割合に影響した裁判例(千葉地裁 平成21年7月14日判決)
以下は実際に飲酒をして運転をしたことにより、過失割合に影響があった裁判例です。
原告が乗った車に、被告が運転する車が追突する事故を起こし、原告は被告に損害賠償請求を行いました。
事故当時、原告の車は進路を変更しようとしており、被告は原告の車の後ろから直進をしようとして原告の車に追突しました。
裁判所は、このときの基本過失割合を原告側が7割、被告が3割としていますが、以下の理由で、この事故の過失割合を「原告側が2割、被告が8割」へ修正しました。- 被告は制限速度を時速50キロメートル以上超えた速度で運転していた。(2割修正)
- 被告は無免許運転だった。(2割修正)
- 被告は酒気帯び運転だった。(2割修正)
- 原告は右後方確認が不十分だった。(1割修正)
お問い合わせください。
3、慰謝料以外にもある! 追突事故の被害者が請求できるお金
飲酒運転による追突事故の被害に遭った場合は、慰謝料だけでなくさまざまな損害に対して賠償請求が可能です。以下では、請求できる主な項目と具体的な内容を確認していきましょう。
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(1)治療費・通院費
交通事故で負ったケガの治療にかかった費用は、加害者側に請求できます。
対象となるのは、診察費・入院費・手術代・投薬費・リハビリ費用など、必要かつ相当な医療行為にかかる実費全般です。
また、通院のための交通費も請求対象となります。電車やバスの料金のほか、自家用車のガソリン代も含まれます。
治療費・通院費ともに実費の請求となるため、領収書は必ず保管しておくようにしましょう。 -
(2)休業損害
事故によって仕事を休まざるを得なかった場合、その間の収入減を「休業損害」として請求できます。
給与所得があれば、基本的に事故前の給与明細や勤務証明書をもとに減少した収入額が計算されます。専業主婦の場合でも、厚生労働省が公表している「賃金センサス」という平均収入の資料をもとに休業損害の請求が可能です。
また、無職の方であっても失業中や求職中の休業損害が認められる可能性があるため、不安があれば弁護士への相談も検討しましょう。 -
(3)慰謝料
慰謝料は、交通事故で受けた精神的苦痛に対して支払われるお金です。
事故でケガを負い通院・入院した場合は、「入通院慰謝料」の請求が可能です。入通院慰謝料の金額は、基本的に通院日数や治療期間に応じて決定されます。
また、慰謝料には3つの基準があり、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準のどの基準で算定されるかによって金額が異なります。もっとも高額になるのは、過去の判例などに基づいて算定する「弁護士基準」です。
相手方の保険会社から提示された慰謝料に納得できないときは、弁護士に相談することをおすすめします。 -
(4)後遺障害による逸失利益や慰謝料
治療を続けても完治せず後遺症が残った場合、後遺障害等級認定を申請します。後遺障害等級が認められれば、「後遺障害逸失利益」と「後遺障害慰謝料」を請求できる可能性があります。
逸失利益とは、本来得られるはずだった将来の収入が、後遺障害により減少することによる損害です。被害者の年齢や職業、認定された後遺障害等級に応じて細かく算出されます。
また、後遺障害が残ったことに対する精神的損害として、後遺障害慰謝料も別途支払われます。後遺障害等級認定の申請や逸失利益の請求は複雑であるため、弁護士に相談しながら手続きを進めていくことが望ましいです。
お問い合わせください。
4、飲酒運転の車に追突されたら、弁護士に相談を
飲酒運転による追突事故の被害に遭った場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談するメリットは、以下のとおりです。
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(1)賠償金を増額できる可能性がある
弁護士に依頼することで、加害者側の保険会社から提示された賠償金を適正に見直し、増額できる可能性があります。
保険会社が提示する賠償金は「任意保険基準」で計算されており、弁護士が扱う「弁護士基準」よりも少なくなるケースが多いです。
とくに飲酒運転が原因の事故では、加害者の悪質性が高いため、精神的苦痛に対する慰謝料の増額が認められやすい傾向があります。弁護士はこうしたポイントを的確に主張し、裁判例などに基づいて損害賠償の妥当な金額を算定できます。 -
(2)相手方とのやり取りや交渉を代理で行える
弁護士は、保険会社や加害者との交渉に代理で対応できます。
事故後は、加害者本人やその保険会社から連絡がくる場合があり、被害者にとって大きなストレスになりがちです。交渉の内容によっては不利な条件で示談に応じてしまうリスクもあるため、注意しておかなければなりません。
弁護士が代理人として対応することで、法的な観点から主張できるため、交渉を有利に進められる可能性が高くなります。また、弁護士に依頼すれば被害者本人が対応する必要がなくなり、治療や日常生活の回復に専念できるでしょう。 -
(3)後遺障害認定申請などの必要な手続きをサポートできる
弁護士は、後遺障害等級の認定申請などの複雑な手続きも一括してサポートできます。
追突事故に巻き込まれた場合、ケガが後遺症となって残ってしまうケースがあります。後遺症に付随する損害賠償は、後遺障害等級の認定を受けなければ請求できません。
弁護士に依頼することで、必要書類の収集や精査・申請書類の作成など、手間のかかる作業を代行できます。もし不認定となった場合でも、異議申立ての手続きや追加資料の準備など、被害者が適正な評価を受けるためのサポートが可能です。
お問い合わせください。
5、まとめ
飲酒運転による追突事故に巻き込まれた場合、正当な補償を受けるためには適切な手順を踏む必要があります。事故直後の警察への通報や加害者・証人の情報確保、医療機関での受診といった初期対応が重要です。
交通事故の被害者は、慰謝料・治療費・休業損害など、加害者に対して幅広い損害賠償を請求できます。しかし、法律知識がなければ適切な過失割合や賠償金を判断するのは難しいケースも多いでしょう。
弁護士に相談することで、加害者側との交渉や損害賠償請求の手続きを一任できるため、負担を大きく軽減できます。
飲酒運転による交通事故で悩んだときは、納得のいく補償を受けるためにも、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士にご相談ください。
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