落下物との事故で補償は受けられる? 相手を訴えることはできる?

2024年01月30日
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落下物との事故で補償は受けられる? 相手を訴えることはできる?

2022年に盛岡市で発生した交通事故は487件でした。

高速道路などにおいて車両を運転中に、路上に放置された落下物に衝突した場合、その後の対応は誰が落としたのか分かっているかどうかで変わります。落下物を落とした人が判明すれば、その人に損害賠償を請求できる可能性もあります。

本コラムでは、落下物事故に関して損害賠償を請求する方法について、ベリーベスト法律事務所 盛岡オフィスの弁護士が解説します。


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1、落とした人が分からない落下物事故|保険金などを受け取れる場合がある

自動車の積荷を転落させることは道路交通法違反であり(同法第75条の10)、落下物事故は落下物を放置した人に責任があります。
したがって、基本的には、自動車の運転中に落下物と衝突した方(被害者)は、落下物を落とした人(加害者)に損害賠償を請求できます。
ただし、落とした人が誰だか分からない限り、加害者に対して損害賠償を請求することはできません。

落下物を落とした相手に損害賠償を請求できない場合でも、以下のような補償を受けられる可能性はあります。

① 自分が加入している自動車保険の保険金
保障内容によっては、自分が加入している自動車保険から保険金を受け取れることがあります。
保険約款を確認したうえで、保険会社にお問い合わせください。

② 政府保障事業
被害者がケガをしたなど人身損害が発生した場合には、政府保障事業によるてん補金を受け取れることがあります。

2、落とした人が判明している落下物事故|損害賠償を請求できる

落下物を落とした人が判明している場合には、その人に対して損害賠償を請求することができます。

  1. (1)賠償請求できる損害項目例

    落下物を落とした人に対して、被害者が賠償を請求できる損害項目としては、以下のようなものが挙げられます。

    人身損害の主な項目
    ① 治療費
    ケガの治療にかかった実費については、原則として全額の損害賠償を請求できます。
    (例)初診料・入院費・通院費・薬剤費など

    ② 通院交通費
    ケガの治療やリハビリのために通院した場合、その交通費の損害賠償を請求できます。
    公共交通機関であれば実額、自家用車であれば走行距離に応じた金額が対象です。

    ③ 装具・器具購入費
    ケガの治療やリハビリのために装具・器具を購入した場合、購入費用の実額については、原則として全額の損害賠償を請求できます。

    ④ 付添費用
    被害者の入院や通院に家族が付き添った場合、入院であれば1日当たり5500円から7000円程度、通院であれば1日当たり3000円から4000円程度の付添費用を請求できます(医師の指示がある場合や、症状により付添いを要する場合にあたることが条件となります。)。

    ⑤ 入院雑費
    入院中における日用品などの購入費用として、入院1日当たり1500円程度を請求できます。

    ⑥ 休業損害
    ケガの影響で仕事を休んだ場合に、得られなかった賃金の損害賠償を請求できます。

    ⑦ 入通院慰謝料
    ケガをしたことによって、被害者が受けた精神的損害の損害賠償を請求できます。

    ⑧ 後遺障害慰謝料
    ケガが完治せず後遺症がのこったことによって、被害者が受けた精神的損害の損害賠償を請求できます。

    ⑨ 逸失利益
    ケガの後遺症によって労働能力が失われた場合に、将来にわたって得られなくなった収入相当額の損害賠償を請求できます。

    物的損害の主な項目
    ① 修理費(または買替差額)
    壊れた車の修理費につき、原則として全額の損害賠償を請求できます。
    ただし、修理費が中古車市場における再調達価格(=車両時価額+買替費用)を上回る場合は、買替差額(車両時価額-壊れた車の売却代金)が損害賠償の上限となります。

    ② 代車費用
    壊れた車が直るまで代車を借りた場合、代車費用の損害賠償を請求できます。

    ③ 評価損
    事故車になったことで中古車市場における評価額が下がった場合、評価減少分の損害賠償を請求できます。

    ④ 休車損害
    タクシーやトラックなどの営業車が壊れて稼働不能になった場合、得られなくなった利益相当額の損害賠償を請求できます。
  2. (2)損害賠償請求の手続き

    落下物事故の損害賠償を請求する場合には、主に以下のいずれかの手続きによって行うことになります。

    ① 示談交渉
    加害者側との間で、損害賠償の金額や支払方法などを交渉します。

    また、加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社との間で交渉を行うことになります。

    ② 交通事故ADR
    裁判所以外の第三者機関が取り扱う、交通事故に関する紛争解決手続きです。
    交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターが取り扱っています。
    交通事故ADRでは、弁護士などの専門家が示談あっ旋などを行います。

    訴訟よりも早期に紛争を解決できる点が、交通事故ADR大きなメリットです。

    ③ 訴訟
    裁判所で行われる公開の紛争解決手続きです。被害者側の主張が認められれば、加害者側に対して損害賠償を命ずる判決が言い渡されます。

    訴訟では交通事故に関する紛争を終局的に解決することができますが、手続きが長期間にわたる傾向にあるという点がデメリットとなります。


    一般的には、まず示談交渉を行い、まとまらなければ交通事故ADRまたは訴訟のいずれかを選択することになります。

3、落とした人が任意保険に加入していなかった場合の対処法

以下では、落下物を落とした人が任意保険に加入していなかった場合に、保険金を受け取ったり損害賠償を請求したりするための方法を解説します。

  1. (1)自賠責保険の保険金を請求する

    自動車の運転者には、自賠責保険への加入が義務付けられています(自動車損害賠償保障法第5条)。
    そのため、自賠責保険への加入率はほぼ100%に達しています。

    落下物を落とした人が任意保険に加入していなくても、自賠責保険には加入している可能性がきわめて高いでしょう
    したがって、自賠責保険の保険会社に連絡して、保険金の請求手続きを確認してください。

    ただし、自賠責保険の対象となるのは人身損害のみです。
    物的損害については、自賠責保険による保険金を受け取ることはできない点に注意してください。

  2. (2)加害者に対して直接損害賠償を請求する

    自賠責保険ではカバーされない損害についても、示談交渉や訴訟などを通じて、加害者に対して直接的に損害賠償を請求できる可能性があります。

    ただし、加害者本人を相手に行う損害賠償請求は、任意保険会社に対する保険金請求よりも難航する傾向にあります。
    請求する際には、専門家である弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

4、交通事故の損害賠償請求について弁護士ができるサポート

以下では、交通事故に関する損害賠償の請求について弁護士がサポートできる事項を解説します。

  1. (1)弁護士基準による損害額の算定・賠償請求

    加害者側の任意保険会社が提示する保険金額は、独自の基準(=任意保険基準)に基づいて算出されたものであるため、客観的な損害額に遠く及ばないことが多いです。

    弁護士に依頼すれば、過去の裁判例に基づく客観的な基準(=弁護士基準)によって損害額を算定したうえで、任意保険会社に対して適正額の保険金を支払うように請求することができます

  2. (2)示談交渉・ADR・訴訟などの代理

    交通事故の損害賠償請求は、示談交渉・ADR・訴訟などの手続きを通じて行うことになります。
    しかし、これらの手続きに被害者自ら対応することは、時間・労力・知識などの問題から非常に大変なものとなります。

    弁護士に依頼すれば、交通事故の示談交渉・ADR・訴訟の対応を全面的に代行してもらうことができるため、損害賠償請求に関する負担を大幅に軽減させられます。

  3. (3)後遺障害等級認定のサポート

    交通事故によって後遺症がのこった場合は、後遺障害等級認定を受けることで、等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益の損害賠償を受けられます。
    適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、認定基準をふまえて医師とコミュニケーションを取り、適切な内容の後遺障害診断書を発行してもらうことが大切です。

    弁護士に依頼すれば、医師と緊密にやり取りを行って申請書類を準備してもらうなど、適正な後遺障害等級の認定を受けるためのサポートを得ることができます

5、まとめ

自動車の運転中に落下物と衝突した場合は、まずは、落とした人が誰だか特定することが重要です。
もし落とした人を特定できた場合には、落下物事故に関する損害の賠償を請求できます。損害賠償を請求する際には、適切な金額の賠償金を請求したり交渉に関する負担を減らしたりするために、弁護士に相談してください。

交通事故の損害賠償請求を検討されている方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています